畸形の愛
彼女が長い髪を結わいているのを、よく斜め後ろの席から眺めていた。チラリとうなじにホクロが見えた時に彼女の秘密を一つ知ってしまったみたいで僕は嬉しくなった。
彼女の住んでいるアパートの前を通ると、昼間なのにカーテンが閉まっている。それに僕は興奮をおぼえた。いやらしい子。生理ナプキンにコスモスの花弁を擦りつけて、彼女の名前が印刷されたテプラが貼ってあるポストに入れた。チラシや茶封筒が無機質なコンクリートの床に散らばった。
新聞勧誘を装い、彼女の家に押し入った。
茶色のドアポストの錆びた音
彼女の白い下着
タバコの残り香を与える
「いつも、あなただったのね。」
冷静な、彼女のゆっくりとした口調と髪の匂い
鼻から体内に侵入していく
嗚咽、薬、吐瀉物
アルビノのハツカネズミのようだ
彼女のブロンドの髪が、時折僕の汗ばむ体にくっついた
彼女と愛をまさぐることは無い
ベランダに出て、奇妙なサボテンに少し残った缶チューハイを与えた
彼女にまたキスしてもいいかと聞くと断られた
口が寂しくて タバコを咥えた
君は変わらずに私を愛してくれるの、なんて彼女が言う
まだ大人になれなくて ただ子供のような微笑みを浮かべた
冷えた手すりの感覚 耳鳴り
彼女の悲しそうな横顔
綺麗だと思った
9月の朝、ベッドの上で踵を割いて赤い花弁の中に彼女を探した日、記録、キカ。